済・高円寺駅前皮膚科 | 日記 | ヘルペスと顔の感染症 ─ 肌荒れの理論?皮膚科学(5)


2015/04/02
ヘルペスと顔の感染症 ─ 肌荒れの理論?皮膚科学(5)


ヘルペス 疱疹 ほうしん ─ 浮腫がポイント? 
ヘルペス属 には、皮膚科医たいへん縁 エン が深いのです。口唇 こうしん に限らず、
 単純疱疹、水痘帯状疱疹、伝染性単核症、蚊アレ、種痘様水疱症、バーキットリンパ腫、
   ジアノッティ症候群(病、の方じゃないよ)、免疫抑制下CMV感染症、突発性発疹、
   ちぃーっす DIHS、ジベルばら色粃糠疹、カポジ肉腫、…あれ?ちゃう?まいっか。

・口唇/陰部ヘルペスの 診断 は、実はけっこう難しい。まず第一にムケるということ。
 カンジダとは異なり、表皮全層ごっそり殺られることが多いので、そこそこ痛いです。
   ただこの痛みは神経ダイレクトという説が有力で、…ムズムズチクチクしてきた。
・だから不得意分野の人が言うことなど、あまり信じないでヨロシ。 検索してねっと。
 ひとつ言えることは、ウイルス がいつ intrude ↓ したかなど、わからんこと多々あり。
   そして再発を繰り返すほどに、症状が微妙になっていきます。 医者にはわからん。
・などと言っておりますと、本気で商売あがったり下がったりします。重視しているのは
 限局 した水っぽさです。ウイルスに殺られた表皮の細胞付近には、水がたまります。
   難しく言えば、表皮内の浮腫 ふしゅ が起こり、結果として 小水疱 を生じます。


ヘルペスの診断 疱疹 ─ 表皮内浮腫・水疱の病理学的分類 (皮膚科医ムケ) 
・一口に 表皮内 の水疱といっても、病理組織学的には複数の違うタイプがあります。
  1.細胞内浮腫 ← 単純疱疹、帯状疱疹、水痘、痘瘡?、手足口病、…
  2.細胞間浮腫 ← 接触皮膚炎、異汗性湿疹、貨幣状湿疹、自家感作性皮膚炎、…
  3.棘融解   ← 天疱瘡、ダリエ病、ヘイリーヘイリー病、… 
  4.顆粒変性  ← 水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症、… 
・このうち3,4は頻度が少なく、浮腫も少なく今はおいときます。 機会あればまた。
・1.はウイルス感染細胞が風船のように膨化 ballooning したのち破裂して亡くなり、
 残った膜がプレパラート上で網目状 reticular に変性 degeneration して見えます。
   その空隙が水疱となるので、中には風船細胞と多量のウイルスが浮かんでます。
・2.はまだ生きている細胞の隙間に、リンパ球やらのお邪魔虫が入り込んで騒ぐため、
 プレパラート上では透けた隙間に健気な 棘 きょく がつながって見えます。Kizuna?
   バラバラになれば水疱と帰す。海綿状態 spongiosis と名前ついちょりますタイ。
   ★以上の参考文献: あたらしい皮膚科学:S水先生。 本とよかウェブですたい。

・1.2.とも、感染やアレルギー反応が成立した 局所 の表皮内に、水疱が生じます。
   変化は表皮の一部に同時多発的に始まるため、原理上は 多房性 水疱となります。
・つまり医者には能力が要求されます。細胞内浮腫由来のウイルス性多房性水疱と、
 細胞間浮腫由来の海綿状多房性水疱を見分けるように。 水疱蓋は破れて剥けてたり。
   前者は浅い 潰瘍、後者は 糜爛 を呈しやすいですが。絶対、というものはない?
・そうタイ、要は海綿タイ。じゃなく。 相対的 に評価を下していくのです。その中で、
   真皮レベルの浮腫の程度と範囲、等まで織り込むのが、真の皮ふかいですタイ。
・これ以上は、マニアックになりすぎますのでやめときます。大ざっぱに見て、
 海綿状態は メン 状に、網状変性は テン 状に生じます。 ヘルペスの基本は点です。
   抗原が外から来るか、内から来るか。当然、表皮より真皮のほうが深いですたい。

・典型的な口唇ヘルペスは、口唇付近の局所の神経がチクチクする 前兆 から始まり、
 その 一部分 だけが、赤くぶくっと膨れます。大きさの揃った細かい水疱が出てきます。
   ─ これはすでに神経=真皮側、に潜伏しているウイルスが再活性化する姿です。
・カブレのモトは外から来ます。ヘルペスのモトは内から来ます。 そりゃ違うわな。
・しかし、ヘルペスだって最初は外から来ます。初感染 が顕在化すれば凄惨なものです。
   抵抗力の弱い皮膚には 播種性 に広がります。 ─ の皮膚科医にお任せ下さい。


ヘルペスの分類 疱疹 ─ 単純ヘルペスと帯状ヘルペス 
・いわゆる「ヘルペス」は大きく二つに分けることができます。テキトーな印象なら。
  ★単純疱疹(← HSV1/HSV2): しょぼいがたびたび現われる。「しつこい!」
  ★水痘・帯状疱疹(← VZV): 派手だがたまにしか現われない。「なんじゃい!」
・いずれも経皮・経粘膜的に初感染し、神経に潜伏します。皮膚と神経は同じ 外胚葉
 由来なので、なんか関係あるのでしょうか? とにかく 表皮神経 に親和性が高い。
   ─ そのへんの肝心?肝腎?なトコは自信ないので、よそを当たっておくれなもし。

  ★ヘルペス性歯肉口内炎 ← HSVの初感染 
・突然メシも食えないほどに、お口がびらんびらんになって痛くて熱も出て、という場合、
   第一に単純ヘルペスの初感染を疑う必要があります。入院を要することもあります。
スティーブンス・ジョンソン症候群天疱瘡、という重大な疾患の鑑別を要します。
   前者はおもに重症薬疹、後者は粘膜を志向する自己免疫疾患です。やや厄介です。
・陰股部 シモ の初感染も重症化しやすいです。口はHSV1、下はHSV2、が本来の姿ですが。
 近年はあまり関係ないようで。ウイルス型の違いによる治療の区別もあまりないです。
   なぜかシモの初感染には、特定の病名はついてません。症状は結構派手なのに。

  ★ヘルペス性ひょう疽 ← HSVの手指末節への感染(初・再) 
・指先が感染すると、この病名で特定します。細菌で起こる「ひょう疽」に似がちですが。
   抗生物質=抗細菌薬、の内外用では治らず、表皮が厚い分、自然にも治りにくい。
・診断が肝心です。膿疱は点状の性格を残し、病変も爪郭から微妙に離れてたりします。

  ★再発性ヘルペス ← HSVの再活性化 
・さてひとたび人体に intrude したHSVは、神経の根っこに棲みつきます(潜伏感染)。
   ただ 不顕性感染 というのもあって、侵入時の派手な症状がないことも多いようで。
・ちょっと疲れたな~、とか風邪引いた(かぜの華)とか、免疫系に余裕がなくなると、
 突然ブクッと現われます。基本、侵入した所の皮膚につながってる神経にひそむので、
   いつも同じようなところに出てきては、しばらく悩まされる、という繰り返しです。
・好発部位はなんと言っても口唇と陰部ですが、顔の各所や臀部にもよく見られます。

  ★カポジ水痘様発疹症=疱疹性湿疹 ← HSVの播種 はしゅ 
・乳児~小児やアトピー性皮膚炎など、皮膚のバリア機能がもともと 弱い かたでは、
 ウイルスが思いのほか広範囲に広がってしまうことがあります。再発時であっても、
   経皮的な撒布であるため、サイズの揃った腫れの少ない点状皮疹が際だちます。
・個々の皮疹(漿液性丘疹~小水疱)は浅い潰瘍となるため、融合するとかなり大きな
   表皮欠損の元にもなり。これがまたなんと、顔と首 に好発します。口に近いから。
・潰瘍は細菌感染にも無防備になるため、膿だらけ瘡蓋だらけになると、それはもう
 凄惨なものです。気軽にキモいと感じた途端、ヘルペスの個疹を見落としたりもします。
   ─ 昔の皮膚科学書が過剰にグロテスクな理由は、実はその辺にあったりしたり。

  ★水痘=みずぼうそう ← VZVの初感染 
・ポックスは痘瘡=天然痘。今や絶滅危惧種です。 もっとチキンなポックスだから、
   水疱瘡 みずぼうそう と言うようです。鶏肉も優れた食料品であり永遠に不滅です。
・医者になりたての頃は(なんて、もしかして今でも?)泣かされました。子ども に。
   でも皮膚科にも来てね。水ぼうそうの子どもは、皆さん小児科行ってしまうけど。
・皮疹が軽い水痘は、診断がわりと難しい。同胞や身近な人の情報収集が欠かせません。
 ポイントはやはり発熱と、小さい赤ポチに始まり膿疱・痂皮に至る履歴、新旧混在。
   誤診も懐かし? 乳児多発性汗腺膿瘍や急性痘瘡状苔癬状粃糠疹を鑑別、っとね。
・多発する皮疹は上気道感染からのウイルス血症によって生じます。あくまで内から。
   ここにも、ヘルペス一派の皮膚への親和性が見てとれます。おお、血より皮膚やで。
・とにかくVZVは、麻疹さまに次ぐくらい、伝染力(飛沫感染≒空気伝染、ですか)と
   起炎性?が高いです。いろんな 合併症 あるからマシン甘く見ないでおくれなもし。

  ★帯状疱疹 ← VZVの再活性化 
・有名な疾患でしょうか、またいずれ? 早期診断・早期治療に尽きると思います。


ヘルペスの治療 疱疹 ─ 獅子身中の虫、じゃねえって 
・ヘルペスの治療は基本 飲み薬 です。神経に侵入潜伏したやつは塗ってもボコれません。
   だから重症なら 点滴 する。アシクロビルもビタラビンも優れた薬だと思います。
・副作用は少なく、狙ったウイルスに応じて用量を調節します。バルトレックスR なら
  *単純疱疹:1日2錠、朝夕1錠ずつ5日間。再発抑制療法では1日1錠を連日継続。
  *帯状疱疹:1日6錠、朝昼夕2錠ずつ7日間。腎機能低下時は調節←排泄を考慮。
・HSVにもVZVにも、まったく同じ薬が効くのです。実はウイルス、薬が効くやつは珍しい。
 それだけに大切に使いたい薬です。HSVとVZVでは、必要な血中濃度がだいぶん違います。
   そいえばソリブジンという薬が昔、ありましたね。世間に受容されてこその薬です。
・しつこい陰部ヘルペスには、わりと最近 再発抑制療法 いうのが保険適応になりました。
   「耐性」ウイルスできちゃったりしない? 原理上はまあ、ないとは思いますが。
・しかし薬を使っても、残念ながらウイルスと永遠におさらば、とはならないようです。
 患者さまは身中の虫っぽいものと共存し続けることとなります。でも、なんとか成増。
   あまり神経質になりすぎぬよう、賢く宥めつつ、元気に生きてまいりましょう。


顔の感染症 ─ 肌荒れ関係なくなっちゃいましたぁ 
・今回はヘルペスから顔の感染症に繋げて、肌荒れにしがみつくつもりでおったのですが。
   そろそろ限界が参りました。じゃあ、いつものやつで逃げちゃうかぁ。連呼連呼。
  ★ウイルス:青年性扁平疣贅、尋常性疣贅、伝染性軟属腫、単純疱疹、帯状疱疹、…
      伝染性紅斑、麻疹、風疹、水痘、伝染性単核症、種痘様水疱症、…
  ★細菌:伝染性膿痂疹、毛包炎、せつ、尋常性毛瘡、丹毒、蜂巣炎、梅毒、結核、…
      癰は顔にはできないYO? にきび 尋常性ざ瘡 は感染症じゃないよう?
  ★真菌:白癬、カンジダ症(毛瘡、口唇口角炎、鵞口瘡)、スポロトリコーシス、…
  ★動物:ニキビダニ皮膚炎、…
・ただの肌荒れと思ったら感染症、なんてことにならぬよう。まずはお医者にご相談を。
   ── 次回に続く。 またいずれ。 なんか、ム×ム×してきた明るい農村。


ヘルペスのまとめ ─ 当院の取り組み 
・お岩さんはヘルペスである、という説が有力です。見た目でお化け扱い人類の旧弊です。
・折れない心を養い、チラ見で即断せず、皮疹を分解・再構築し理論立てて診断をします。
・診断の確実度を考慮し、ときに大胆にときに繊細に、患者様のためになる治療をします。



★参考作品 
侵入者 Intruder ↓ :ピーター・ガブリエル。
薔薇の名前 :ウンベルト・エーコ。 バラバラの名前:S水Yノリ。×乗りパイレーツ。
マニアック Maniac :マ×××・センベロ。 べむべら千べろ、近くに一杯アルよぅ。
・ダイザッパ大雑把論 :大山甲日×フランク・ザッパ。 というのがあったヨナ確か。
夢の播種 はんしゅ :日影丈吉。 読み仮名まちがってね?藩主か。 
嗤う伊右衛門 :京極夏彦。 うろ覚え。

久しぶりの漢字検定 
・空隙   ・隙間   ・健気   ・瘡蓋   ・凄惨   ・撒布   ・成増 
・そろ う   ・すぐ れる   ・なだ める   ・つな ぐ   ・わら う 


本稿と関連の深い 日記 もあります。お時間がございましたらご参照下さい。
・ ざそう(ニキビ)、脂漏性湿疹(ふけ症)、酒さ(赤ら顔)、… ─ セボレア 脂性 の理論皮膚科学・新 
・ ざ瘡(にきび)─ セボレア 脂性 の理論皮膚科学・完 :そして、慢性膿皮症と粉瘤(ふんりゅう) 
・ カンジダ症/カンジダ皮膚炎 : じめじめ上皮の トリックスター ─ あるいは皮膚科感染症学入門 
・ 皮膚炎と湿疹:再論 ─ 肌荒れの理論?皮膚科学(2) 
・ 顔の肌あれ:敏感肌?脂性肌?ニキビ肌? ∋脂漏性湿疹… ─ 肌荒れの理論?皮膚科学(3) 
・ 口唇炎と口唇ヘルペス:お口・再論 ─ 肌荒れの理論?皮膚科学(4) 


160320更新:
・1年かかって、インドになっちゃってたのに気づきました。
 訂正しておきましたので、ガブさま許してちょんまげ。

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