済・高円寺駅前皮膚科 の日記
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ざ瘡(にきび)─ セボレア 脂性 の理論皮膚科学・完 :そして、慢性膿皮症と粉瘤(ふんりゅう)
2014.05.30
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●こじれたニキビ ─ 面皰 めんぽう に始まり“なにか”に至る
・院長、アブラしょう、で困っております。が、諦めません。欲しがりません克つまでは。
── 今回は、「謎に満ちた皮脂腺と関連疾患」に、あんまり関係なくなっちゃいました。
・まず、ざ瘡のできるメカニズムを、適当におさらいしてみます。
1.毛孔の閉塞・毛包の膨張 → 面皰 =白にきび
2.毛包の破綻・周囲の炎症 → 炎症性ざ瘡=赤にきび
3.細菌の増殖・毛包の蓄膿 → 膿疱性ざ瘡=おでき
4.皮下進展・偽嚢腫の形成 → 嚢腫性ざ瘡=しこり
5.瘢痕形成・真皮の線維化 → 集簇性ざ瘡=ケロイド
── 「耳よりいいメール 56号」時代と、少しずらしてみました。ご参照下さい。
ついでに、普通 ふつうのニキビに関しては、前回分まで をごらん下さい。
・煽情的に、申しますと。鼠径部や臀部や腋窩にできる“にきび”まで含めて。
今回はこじれてしまったニキビの話が主体となります。 Never Ending Story。
・皮脂腺と皮脂の分泌が病的な結果にいたる状態を 脂漏 しろう seborrhoea と言います。
教科書を見ると、その代表が前回までの三疾患であるわけです。
・皮膚そのものと皮脂腺という付属器と、を巻き込む複雑さがソソリます。がもともと
あまり系統的な概念でもなく、なんでも「ストレス」にされかねないのでご注意を。
個人的には、大きな問題点は四つある、と考えております。
★マラセチア=済 ★物理的刺激=済 ★異物反応=済 ★自然軽快
●あばた アバター=瘢痕 ─ 真皮を超える傷害、の刻印
・映画に出てる蒼い人を見て、けっこうキマシタ、メイドインジャパンかと思いました。
「あの青い人、肌荒れキツイっすよね~。」── 見た目 を揶揄する言葉の多いこと。
・わたくしだって、ハゲと言われていい気はしません。かといって、「毛の不自由な人」
とはもっと言われたくないあんたには。 ─ さすがに言われてませんけど。
・つまり、見ためはたしかに、真っ先 に重要ですが。言葉 も大事です。 世間さま、
自分の眼力をテキトーに肯定しない、という点 ポイント は、心がけて参りましょう。
また眼力 がんりき は、テキトーに養えるほど甘くないぜよ。(若い人向け。)
・冒頭から逸れまくっておりますので、話を元に戻します。
ニキビをなぜ治療するのか、と問われれば、そこにニキビがあるから、じゃなくて。
(以前、言ってしまったような。) 「痕 あと」を残さないためです。
・皮膚の傷害において、表皮レベルの欠損であれば、結局は跡形もなく治ります。
真皮レベルの欠損では、深いキズなら完全に元通りにはならないこともあります。
皮下脂肪に達する欠損は、たいてい少し引きつれたような治り方となり、
この「刻印」として残ってしまった傷跡を 瘢痕 はんこん と呼んでいます。
・ざ瘡は真皮~脂肪上層の毛包周囲を主座とする炎症性疾患であるため、
治ったあとにも、しばしば瘢痕を残します。 人により程度の差はございますが。
●ざ瘡の自然軽快 ─ 魑魅魍魎の跳梁跋扈を許すわけ
・ざ瘡は、よほど特殊体質の方でなければ、青少年~壮年期の一過性の疾患です。
つまり、どんなニキビであろうと、ゼッタイいつかは治るのです。 ── 不幸にして、
見た目が一番気になる年代に、疾患のピークが一致した。 それだけのこと です。
・だから、魑魅魍魎 ちみもうりょう が、跳梁跋扈 ちょうりょうばっこ するのです。
そしてそれを、許す わけです。 患者さまは神様で、そのご満足がすべてです。
・院長が医者になった頃には、アトピー性皮膚炎 が猖獗を極めていました。
患者さま側でも、お医者様側でも。 あたかも「アトピー」≒「死刑 !!」by こまわり君、
宣告 でもあるかのように。 ─ 宣告は 医者の大事な仕事 ですから、たいへんです。
・某学会が決起した「ビジネス」騒動に関しては、記憶に新しいところですが。
しかしまあ、どちらが魑魅で魍魎か。 → 私はやっぱり 魍魎 が好き(みつしり と)。
・何を言いたいかおわかり頂けますでしょうか。自然軽快する疾患は、狙われやすい。が。
それに乗って踊ってみるのも、いわゆるひとつの青春 Disco Train なのでしょう。
じゃなくて、アトが残りますよ~。 じゃなくて、当院にご来院下さい。 じゃ…
●ホルモン ほるもん 放るモン ─ いまは亡き メサルモンF
・ざ瘡はなぜ、“青春のシンボル”なのでしょうか。あえて簡単に言ってしまえば、
皮脂腺の働きが 性ホルモン に強い影響を受けるからです。
・ホルモンのことは、私の説明では間違ってそうなので、専門家にお問い合わせ下さい。
ウィキペディアで調べてみたら、まことしやかな「放るモン」説はウソだそうです。
※ ホルモン焼き。 内臓=捨ててしまうもの=放ってしまうモノ=放るモン。
・というわけで、自然に治る のも当然です。 治療の出番はありません。
“枯れてきた”いま、しみじみそう思います。 ── ただのウソです。(どこが)
・禍根を残しやすいニキビは、やはり治療すべき疾患です。 イイ薬ありまっせ。
皮膚科医をも脅かす強力な治療法が、あります。 (超)低用量ピル と申します。
・このへんもワタクシの説明では間違っていそうなので、専門家をご紹介します。
枯れてない皮膚科の先生方も、アグレッシブですけどナニかと、沢山おられるようです。
・一番大切なのは人生観 ライフスタイル 次第のものであって、イマのことは存じません。
・だから 昔を懐かしむ のです。メサルモンFは効きました。ジオールは効きませんでした。
── どちらもいまは亡きおくすりでございます。合掌。
●膿瘍/嚢腫性ざ瘡 ─ にきびが「しこり」になるとき
・自然軽快 で済ませられれば、医者は要りません。 (ホントいらなかったりして。)
・しかし普通のニキビもこじれれば、皮下 にまで炎症が波及することがあります。
表皮真皮は意外に丈夫なので、5mmを超えるニキビの丘疹はわりと少ない。
一方、脂肪はスカスカなので、皮下に及ぶと1cm越えが当たり前になってきます。
・これを日常的に表現すると、「しこり」としか申しようがない感じですが。
・その正体はさまざまで、初期にはリンパ球から組織球(≒単球)を主体とする
お掃除やさん sweeper が集まって塊になります。その後、好中球が増えて軟化し、
膿瘍 のうよう abscess となります(熟す)。硬いまましぼむこともあります。
・膿瘍は、大きかったり浅かったりすれば、触診で「ぶよぶよ 波動」しますが、
深いものはやはりしこり、としか触れようがないことも多々あります。
・異物肉芽腫ですから、切って人為的に異物を排除すればいいのは、承知のうえで。
結論としては切らないこともままあります。見極め、治療手技、所要時間、などなど。
── 飲み薬で「散らす」つもりが、散らなかったりして。
●瘢痕/集簇性ざ瘡 ─ しこりが「あばた」や「ケロイド」になるとき
・皮脂腺疾患における肉芽腫性の炎症は、異物を排除し組織を修復する目的で起こります。
その異物が自身の細胞のカス(垢や脂)のためややこしい。 それだけのこと です。
組織は、修復されます。ただし、望ましくない形 に治ってしまうことも、あります。
・肉芽腫性炎症の終息期には、組織球などの掃除やさんが減っていき、線維芽細胞が
コラーゲン =真皮の主成分(皆さんお好きな?)、などをせっせと作っていきます。
たいていは(ワタクシのように)力尽きて、元の皮膚より不足気味ですが。
・瘢痕には「増殖期」→「萎縮期」という時系列があり、最初は赤いニキビのアトも、
しばらく経てば血管も減って、白っぽく元の色になっていきます。少しへこみます。
普通の萎縮性瘢痕(あばた)はこうしてできます。残念ながらずっと残ります。
・しかし、増殖期が長続きしたり本気で終わらなかったり、ということもあります。
過剰に産生されたコラーゲンで傷跡は盛り上がり、さらに赤々と傷の外まで広がったり。
肥厚性瘢痕、さらにはケロイド、と呼ばれます。残念ながら体質が影響します。
・もともとが傷を治そうという善意から始まっている分、余計にややこしい。
・ニキビにこの過程が起こり、丘疹・膿疱のみならず、嚢腫・ケロイド入り乱れ、
収拾がつかなくなった状態を 集簇性ざ瘡 と申します。慢性膿皮症(後述)の一型です。
●こじれたニキビの治療 ─ シコリやアバタやケロイドは治せるか?
・膿瘍は 嚢腫性病変 のうしゅ の一種ですが、真の「ふくろ」にはなっていません。
専門用語で、液性成分を覆う上皮組織を欠く嚢腫性病変を 偽嚢腫 といいます。
慢性的に膿んだり治ったり、を繰り返す病変は、しばしば偽嚢腫構造をとります。
・この点に留意しつつ、切るべきは切り、または切らずに内服抗菌薬など使います。
ブヨブヨでないシコリも、原理上は切って異物を出すべきですが、そこはそれ。
なにせそこそこ深いですから。血も出ますし。切った傷跡も気になりますし。
・一度落ち着いてアバタになったものも、治療しようと思えば、けっこう 勇気いります。
薬品(ケミカル)とかレーザーで、もっと削って引きつらせて、平らにしようかな。
・さらにアグレッシブに、ケロイドになったものも、正直 てこずります。
古典的には「長もちするステロイドの注射薬」を局注したり。痛いですから飲み薬?
もっとイケてる皮膚科様も、アグレッシブですけどナニかと沢山おられるようです。
・もっと進歩すべき分野とも思われるため、腕に覚え のお医者様はお手紙下さい。
・美容形成技術を輸出しようとする某国と、原子力技術を輸出しようとする某被爆国と。
ある意味、大差ないのかも。 でもアナタそんなモンで、幸せですか。そうですか。
●慢性膿皮症と粉瘤 ─ 院長イチオシの疾患
・“にきび(もどきの疾患)”は、オシリにもオマタにもウナジにもワキにもできます。
これらを総括する概念として、「慢性膿皮症」というのがあります。
言うなれば、バイキン以上にケアナやアカが問題となる 体質の病気、とでも。
・なんか化膿して皮膚科に行くと、よく「粉瘤 ふんりゅう ですね、切開しましょう」
と言われます。「粉瘤」は本来、表皮構造の袋 表皮嚢腫=真の嚢腫、を指す言葉です。
切開だけして、異物の産生源そのものである、嚢腫壁を残すって…どーよ。
・慢性膿皮症は嚢腫・偽嚢腫、そしてケロイド入り乱れる奥の深い疾患だと感じます。
テキトーに治療すると慢性化しやすいのは確かですが、ちゃんと治療 すれば治るのか。
まだ答えは出ておりません。 皮一枚、全部はがしてはり直すとよい、との説も。
・話し出すと止まらないので、いずれ きちんとした形にまとめる予定です。
・こういったシコリ系の治療は、どの薬とかどの道具とかよりも、見極め 次第のような。
残念ながら、嚢腫・偽嚢腫、見極めかねておられる“皮膚科”様も多いように感じます。
かく言うワタクシも、絶対の自信などありませんが。努力は続けてまいります。
●当院の取り組み
・連載4回の随所に、現時点での勘所も秘密兵器もナニもかも開示しつつ。
これらを踏まえて、今後も真摯な診療に取り組んでいく所存です。
以上で一連の連載も終了です。 1か月以上にわたり書き散らし、申し訳ございません。
お付き合い下さった方がおられましたら、ただただ感謝でございます。
このあとはもう少し本来の形に戻って、日記更新も続けていきたいと思います。
★今回の推薦図書
・魍魎の匣 京極夏彦 → あくまで諧謔の心をもってお読み下さい。まに受けないよう。
・ウロボロスの偽書 竹本健治 → そこはそれ。
・がきデカ 山上たつひこ → トイレット博士 とりいかずよし、とかそういう時代。
★今回の漢語の勉強
・集簇 しゅうそう(スル) 意味=みつしりとあつまる。 例=しゅーそーせーざそー
皮膚科医には外せないため、単語登録しました。→「しゅうぞく」・サ変名詞
本稿と関連の深い 日記 を列挙させていただきます。お時間の許す限りご参照下さい。
・ 皮膚の付属器の疾患 ─ 脱毛、にきび(ざ瘡)、巻き爪(陥入爪)、などなど
・ 脂漏性皮膚炎(フケ症)、酒さ(赤ら顔)、ざ瘡(ニキビ)、… ─ セボレア 脂性 の理論皮膚科学
・ しゅさ(赤ら顔)、ざ瘡(ニキビ)、脂漏性皮膚炎(フケ症)、… ─ セボレア 脂性 の理論皮膚科学・続
・ ざそう(ニキビ)、脂漏性湿疹(ふけ症)、酒さ(赤ら顔)、… ─ セボレア 脂性 の理論皮膚科学・新