済・高円寺駅前皮膚科 | 日記 | 口唇炎と口唇ヘルペス:お口・再論 ─ 肌荒れの理論?皮膚科学(4)
2015/03/11
口唇炎と口唇ヘルペス:お口・再論 ─ 肌荒れの理論?皮膚科学(4)
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口唇の小水疱 ─ ほんとにヘルペス? ・くちびるにブツブツができて、ひりひりして……。最近は、皆さんよくご存知で。
単純疱疹 ほうしん でしょうか、と少なからぬ方が自己診断後に皮膚科を訪れます。
塗り薬なら普通にドラッグストアで売っているようですし、自己治療できるのに。
・実はヘルペスの診断とっても難しいのです。少なくとも私には。 ─ 開業直後から、
2年越しでいまだに診断しかねる患者さまもおるむぜんじ、じゃなかった無能児っぷり。
Hんだセンセ教えてちょ、と言えるような面識もなく。
あと回し の疱疹です。
・口唇のぶつぶつ≒小水疱なら、実は
口唇炎 こうしんえん であることがわりと多い。
その本態は湿疹皮膚炎型反応であり、多くは
一次刺激性、ときに
アレルギー性 の
接触皮膚炎 が主体となります。もちろん、接触皮膚炎=かぶれ、でないのもあり。
・天疱瘡、スティーブンス・ジョンソン症候群、光線角化症、エリテマトーデス、
固定薬疹、扁平苔癬、肉芽腫性口唇炎、開口部プラズマ細胞症、カンジダ症、アジソン、
ポイツ・イェガース、ロージエ・フンツガ・バラン、……以上、何順?やべ順?
・今回は、くちびるの皮膚病のお話です。 自・他覚的触感と色調がヘンになります。
院長すでにいつもの悪い癖でまくっておりますが、いま少しお付き合いのほどを。
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口唇トラブルの理論皮膚科学 ─ ファースト・コンタクトの場 ・お口は、ちょっとしたことで荒れます。乾燥とか、刺激物とか、(花粉とかも??)…
本来、ウチにしまわれているべき粘膜っぽいものが、あからさまに露出したので、
仕方ない。 お口の最前線=口びる?唇?は、まめなリニューアルで対抗します。
・
角化細胞 ケラチノサイト は、最下層の
基底層 で分裂して、外方に積み上がり、
有棘層 をなします。数層積み上がると「臨終の準備」を始め、
顆粒層 ができます。
ここで核を失って死に、ケラチン線維が集積した
角質層 として内界を守ります。
・人体表面は遍く、細胞の亡骸で構築される強固な「角質バリア」で守られています。
しかし口唇表皮には顆粒層が少なく、その表面は準備不足な亡き細胞で覆われてます。
荒れやすいのも当然なので、ほかの皮膚よりもせっせと表面を入れ替えます。
・その入れ替え周期を
ターンオーバー turnover といい、立派に皮膚科学用語です。
普通の皮膚では約1か月、口唇では約1週間と言われます。 ── ムケて当然じゃい!
だからあんまり、剥けるクチビルを、気にしすぎないで下さいませ、どうぞ。
・ターンオーバーが早いと、(1)
傷が早く治る (2)
毒がさっさと出る 利点があります。
食べものは生きものにとって掛け替えのないものですから。ときには毒を口にして、
さっさと出します。毒やテキと接しがちな、皮膚と消化管の
接点 がお口です。
・詳しくは古い日記をご参照下さい。スギ花粉のお口療法も、盛り上がって参りました。
いずれは
埃 も守備範囲内であろうと。 アトピー性皮膚炎、能動的に完治スカ?
・口唇などの開口部は、当然のことながら堅固な支持組織に
乏しい、という特徴もあり。
最初はやさしくネ、という感じで、なぜか柔らかい。堅物すぎるのも考え物です。
・くちびるは表皮とスカスカのコラーゲン系、管や腺と若干の筋肉・脂肪で出来てます。
したがって、炎症→漿液の血管外漏出、が起こると、スカスカの間質に水がたまり。
容赦なく
腫れます。蕁麻疹(クインケ浮腫)がその典型。 まぶた微妙に似てる。
・タラコ・クチビルとお岩さんは、実はたいそうな近縁疾患であったのです。
炎症 です。
タラ口の最多の成因が接触皮膚炎で、タラ眼の最多の原因はヘルペス、帯状の方ですか。
炎症には
浮腫 ふしゅ がつきもので、ただの水?、だから慌てちゃいけません。
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口唇炎の症状 ─ ブツブツ、カサカサ、荒れて痒くて痛くて黒ずんで ・さて、先走りしすぎたようです。 口唇炎とは何か。教科書にはいまいち載ってません。
・そのへんも古い日記をご参照下さい。 要するに、うす~い表皮の中で炎症が起こり、
表皮内に浮腫が起こって細かい水疱(
海綿状)ができるのが、
皮膚炎 です。
この時点で痒いとか痛いとかなんも感じね~とか、ヘンな感じ、とかいろいろです。
・ケラチノがターンオーバーすると亡き細胞たちが剥けて、カサカサと感じられます。
・皮膚炎の際はメラノサイトが活性化し、めんめん
メラニン 作りまくりますカモン。
基底層付近で作るので、すぐ真皮側にいってしまい、ムケたくらいではなくなりません。
真皮の掃除屋・組織球が不要なメラニン取りこんで、
メラノファージ となります。
・この理屈は
ひやけ=日光皮膚炎 の色と同じで、
炎症後色素沈着 とも言います。
じっくり時間を掛けて処理していきます。日灼けなくなるの、何ヶ月?半年?くらい。
口唇に限らず炎症を繰り返す皮膚には、メラノファージが増え末永く黒ずみます。
・本来、口唇表皮にはメラノサイトがないはずので、不思議といえば不思議ですが。
レーザーは真皮浅層までは届きますので、運に任せて照射してみますか?しらん。
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口唇炎の原因 ─ 口なめ皮膚炎 lick dermatitis の謎 ・私が医者になった頃は、「
ドロボウのお口は、舐めずり皮膚炎」と覚えちょりました。
いまでも幼稚園~小学生くらいを筆頭に、唇が乾くんでつい舐めて…とやってるうちに、
泥棒さんかカールおじさんのように、
口囲 に黒いリングをせっせと作ってしまう。
・
唇の縁 フチ が黒ずんでいる方も、もとはブツブツ/カサカサの方が多いようです。
すなわちその黒ずみは炎症後色素沈着?必ずしも痒かったり自覚症状あるとは限らず。
カサカサを緩和しようと無意識に舐めれば、唾液で角質がさらにふやけバリアが…
・こういうのを一次刺激性、といいます。しかしその刺激原が唾液だけって一部、ウソ?
・某所から当地に来てみて明らかに
黒ずんだ方 が多すぎる。 ─ 舐めずっちょるとは、
とても思えないほどに。 口唇辺縁の色素沈着は、都会なほどありがちな病気、すか。
いろんな意味で、武装・精力多すぎます今日この頃。 少しは解除しましょうや。
・カサ口許せずルージュにバームに保湿剤、気合い入れて擦り込むほどにごにょごにょ。
物理的な擦過も、立派に刺激のひとつです。と思います。何の証拠もございませんが。
都会 は確実になにかをスリ・減らしていく傾向があるような。 それもまたよろし。
・以上、綿々とつづってまいりましたが、ほかの原因も忘れないでねってカンジダ。
── 次回に続く。今度こそはヘルペスさん、皆さん、ちゃんと説明します。
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口唇炎のまとめ ─ 当院の取り組み ・お化粧はオンナの武装ですが、物騒なこともあります。口唇炎はオトコには少ないです。
・素顔のままで。診察のときくらいは素のままで居て欲しいですが。パウダールーム
とやらは、夢のまた夢の当院ですので。適宜、配慮して参ります。流しはあります。
・なにかが磨り減っていくように感じる方にも、優しいファースト・コンタクトあります。
・色素沈着は炎症のみにて起こるに非ず。よく診て見逃さないよう、気合い入れてきます。
★参考作品
・
岡田有希子:くちびるNetwork ─ あいぷろがらみですか? つみなかんじ
・
茂木健司:口腔は皮膚疾患情報の窓;皮膚科診療プラクティス2, pp2-8, 1998, 文光堂
・
嘉門達夫:ど××色 ─ あんじぇらあきはサクラ色。あき×城は、……どえもええわ~
・
鈴木光司:リング ─ 初版帯付美品ゆずっち Clear。ほか要らん? 寝ずっちで~す
・
ぜんぶウソ:オードリー、サンドウィッチマン、鳥居みゆき、U字工事……栃木今市
Tりいサン/センセーお世話になっております。らせんと光射す海は欲しいかもん。
本稿と関連の深い
日記 もあります。お時間がございましたらご参照下さい。
・
湿疹・皮膚炎 ─ 理論皮膚科学の第2か3章 ・
中毒疹 ─ アレルギー“的”な皮膚のお祭り騒ぎ: 薬疹、ウイルス、しいたけ、… ・
カンジダ症/カンジダ皮膚炎 : じめじめ上皮の トリックスター ─ あるいは皮膚科感染症学入門 ・
乾皮症・あかぎれ・皮脂欠乏性湿疹・貨幣状湿疹 ─ 肌荒れの理論?皮膚科学(1) ・
皮膚炎と湿疹:再論 ─ 肌荒れの理論?皮膚科学(2) ・
顔の肌あれ:敏感肌?脂性肌?ニキビ肌? ∋脂漏性湿疹… ─ 肌荒れの理論?皮膚科学(3) 150314庚申:
気になった些細な表記を直しました。
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