済・高円寺駅前皮膚科 | 日記 | 自家感作性皮膚炎と紅皮症 ─ 白癬 みずむし や 疥癬 ひぜん たちのスイッチオン
2014/08/04
自家感作性皮膚炎と紅皮症 ─ 白癬 みずむし や 疥癬 ひぜん たちのスイッチオン
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かきいれどき 書き入れ時 ─ 「掻きいれ」てる場合じゃない ・さて、皮膚科の書き入れ時がやって参りました。
水虫 ミズムシ の季節到来です。
・正式名称
白癬 はくせん/皮膚糸状 しじょう 真菌症 は、実は「⊆水虫」です。
つまり、普通にいうミズムシには、そでない病気もたくさん混じってるのであり。
接触皮膚炎 かぶれ、汗疱 かんぽう、異汗性湿疹 いかんせいしっしん、
趾間間擦性湿疹 間擦疹 かんさつしん、膿痂疹(性湿疹) のうかしん、乾癬、
掌蹠膿疱症、糖尿病性水疱・壊疽、趾間型紅色陰癬、点状角質融解(陥凹)症、…
・皮膚科(ちゃんとした)の受診をお勧めしますが、
自己診療後 のご来院も歓迎します。
・感染症に関してはいずれ稿を改めて触れる予定です。今回のお題は「
スイッチ」です。
・自称みずむし様の 2割くらいは上記「ミズムシもどき」とも思われ、さらにそのうち
少なからぬ方々が、
自家感作性皮膚炎 じかかんさ を合併しておられます。つまり、
ミズムシどころの場合じゃない、全身あちこちの痒みにまでなっておられる。
・個人的見解ですが、自家感作性皮膚炎は湿疹・皮膚炎群でなく
中毒疹群 の疾患です。
かぶれや感染といった局所の問題が免疫系を煽り、全身の皮膚を脅かす。
・いわば皮膚の
自家中毒 である以上、分類は中毒疹に入れたい。あえて慣例を離れ、
自家感作疹 と呼びたい。 昔に掻いた「
中毒疹」の日記もご参照下さい。ただし、
帳簿に書き入れる コト、のみ にご執心の各々がたは、なにかとご遠慮下さい。
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自家感作性皮膚炎(自家感作疹)とは ─ 自己責任のお祭り騒ぎ ・尊敬するS水先生が「あたらしい皮膚科学」(Webでも見られる皮膚科入門書)に、
自家感作性皮膚炎の Essense を、次のように記載されています。
「
限局性 皮膚病変の
急な増悪 によって、掻痒を伴う小丘疹や紅斑が
全身 に多発」
・つまり中毒疹と同様に、急に全身に左右対称性の
撒布疹 が生じる、という症状です。
そしてその原因は、自分の一部
にしかなかったはず の皮膚病である、と。
・個々の原因疾患は、
びらん を呈しがちな=表皮の傷害が強い、浅い疾患に多い。
接触皮膚炎、貨幣状湿疹、うっ滞性皮膚炎、…など。体液がしみ出てじくじくしてます。
発症の際にはおそらく、体液が壊れた表皮と
じっくり 接する必要がある。
・湿潤した病変ほど、体液中の免疫担当細胞たちが、頑張って「抗原提示」してしまい。
頑張りすぎて、自分の表皮(のカス)を“テキ”と誤認してしまう、のかもしれない。
スイッチ・オン。 お祭り騒ぎのはじまりです。全身カユくなってまいります。
・テキはあくまで
表皮っぽい ので、生じる撒布疹も個々をとってみれば、ふつうの
しっしん・かぶれ(
湿疹・皮膚炎)っぽい、ブツブツのちザラザラ、になります。
だから自家感作疹でなく、自家感作性
皮膚炎 と呼ばれるようになったのでしょう。
・しかしその治療においては、常に中毒疹を鎮める
しかるべき 心構えを必要とします。
基本的には、原因の排除と、鶴だか神だかの一声だか、とまあお考え下さい。
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白癬疹 はくせんしん ─ 角質層をターゲットとした自家感作疹か。 ・白癬菌とは、その栄養源を角質に求めるべく特化した
真菌=カビ たち、の呼称です。
したがって本来は、自力でびらん=表皮の欠損、を作る力はないはずで。 せいぜい、
薄く剥けて(鱗屑 りんせつ/落屑 らくせつ)、カサカサする程度のはずです。
・にもかかわらず、ミズムシはしばしば、ジクジクするほどまでに深くなります。
これは宿主(つまり患者さま)側が
かぶれ たときと同様の免疫反応を起こすからです。
テキ(カビ)を排除するために、表皮にまで免疫細胞の集結と浮腫が起こります。
・免疫系が頑張りすぎて、剥けなくていい表皮までムケてしまうのかもしれない。
真皮浅層のウ×コ座りたちは、ここぞとばかりにキレてしまうのかもしれない。
── 関係ないはずの手掌手指にまで、水疱形成 してしまうのかもしれない。
・「ミズムシ」のひとに、なぜか、菌がいないはずの手にまで水疱性皮疹が生じるとき、
id 反応 イドって読むの? などと申しておるようです。これって、真菌性中毒疹?
手掌足底、すなわち特殊なケラチン発現をしている部位以外にはあまり出ません。
── しかし、別に真菌と関係なく(普通のかぶれでも)出るような気もします。
・そういう意味で、一時期、某女優?サンで話題になった、
掌蹠膿疱症 の仲間かも。
・少なくとも、菌がいない手掌にまで反応しているからには、テキは菌ではありません。
たぶん、ある種のケラチンとか、
掌蹠 にしかないモノを誤認しているのでしょう。
── 以上、白癬疹(とかid反応)は、自家感作疹=
中毒疹群の疾患 と思うのです。
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疥癬 かいせん ─ そこに自己責任はないのか。 ・角質を栄養源とする、といえば疥癬は落とせません。
疥癬虫=ヒゼンダニ 皮癬 が
角質層内に寄生し、おそらくは宿主側にアレルギー“的”な反応が惹起されて、
全身(通常、頭頚部は除く)に強烈な痒みを生じます。就寝後にひどくなります。
・疥癬の発疹は、とても湿疹“的”です。小水疱ができたり(指間の疥癬トンネル等)、
皮膚の表面がブツブツ(丘疹)したり。掌蹠がザラザラ(鱗屑・落屑)したり。
・肝心なのは、ヒゼンダニという「ムシ」が単独で作る皮疹ではなく、
痒くなるときには、必ず宿主側の免疫反応を、一定程度には伴っているということです。
てゆーか、本当に「
ムシが単独で作る皮疹↓」というのはあるのでしょうか?
・最近、トシとったせいか、蚊に刺されてもあんまり痒くなくなりました。
虫刺されには
即時型反応(蕁麻疹様皮疹)と
遅延型反応(痒疹様皮疹)があります。
ワタクシ刺された直後は痒いのですが尾を引かず。 細胞性免疫、低下してます?
・さて、肝心の疥癬に関しては Mホ さんや O滝 先生、Iしい 先生がたのすぐれた解説、
が Web上でしっかりご覧いただけます。ワタクシの出る幕ではありませんので。
ときに
「紅皮症」の原因疾患 になると。 そこだけ、頂きました!(当麻。)
・一つだけ、
外陰部 にボコボコ(痒疹丘疹)が出てきて、やたら痒いときはご用心下さい。
他の疾患ではあまり見られない、疥癬に最も特異的な皮疹(だと思ってます)です。
・思えば、同じ角質内疾患でありながら、白癬と疥癬のスイッチオンは、違いますねえ。
疥癬が紅皮症化した話はときどき聞きます。 ステロイドの誤用で起こりやすい。
が、ミズムシにせっせとステロイドを塗っても、なかなか紅皮症にはならんようです。
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紅皮症 ─ 自家感作とは別種のスイッチがありそうな。 (皮膚科医向け) ・定義上は、人体表面積のほぼ全部(9割以上)が真っ赤になった状態を
紅皮症 こうひしょう といいます。ホンマモンはけっこう、珍しいようにも感じられ、
存じ上げる患者様のひとりひとりが、頭に浮かんでしまうほどですが。
・基礎疾患がアトピー性皮膚炎である方なら、かなり敷居は低く、頻度は上がります。
診断上、ナニをもって「赤い」と言うのかが、結構問題になったりして。
・しかし、単に赤い部分の面積だけでは
語れない、ぞわぞわする疾患ではあります。
基本的に自家感作皮膚炎と同様、必ず基礎疾患があります。 なら、単なる
症状 では?
── 前回の蒸し返しになりかねず、端的に。 紅皮症は一つの「
疾患」です。
・そのキーワードがスイッチ・オンなのでないかと。ぜひこの中で論じたかったのですが。
そろそろ紙幅も尽きて参ってしまいましたので、またの機会に。 ── 実は、
疥癬が紅皮症化することはさほどないように思います。 その点はご安心下さい。
・紅皮症を中毒疹群に含めていいのか、かなりためらわれます。が。
「
自己責任」のあいまいさを認めれば、EEMやEAC、EEDやPLEVA、肉芽腫症まで、
ぜんぶ中毒疹、の
くくり に含めて論じられてしまえそうにも思えます。
・その中から、機序がはっきりしてきた
水疱症 が独立していき。
病理組織学的にはっきりしている(?)
血管炎 が独立していき。
乾癬 群も?
・当面わからないことだらけなので、とりあえず
なんの病気 でも、
ぼりぼり
引っ掻きまくらない 方がよろしいようで、とだけ申しておきます。
★掻き始めたのが 6月くらいだったので、多少、時期を逸しまして。
違和感がございますようでしたら、お詫び申し上げます。
★タイトルは「日記」となっていますが、これは「お店のミカタ」様の Format です。
日々の思いつきに留まらない
考察 は施した上で、公開する。 という、大原則
は外さず更新を続けて参ります。 お見限りなきよう、よろしくお願い申し上げます。
★本「日記」は文献(論文・成書)など、あまり=横目でしか、見ずに掻き散らしてます。
もしかしたらとっくに解決済みのことを、とっくとくと掻いてしまっているかもしれず。
誤りがございましたらご指摘下さい。 特に患者さまは眉唾を心してお読み下さい。
本稿と関連の深い
日記 もあります。お時間がございましたらご参照下さい。
・
「治らない」じんましん ─原因の“ない”かゆみ─ ・
湿疹・皮膚炎 ─ 理論皮膚科学の第2か3章 ・
中毒疹 ─ アレルギー“的”な皮膚のお祭り騒ぎ: 薬疹、ウイルス、しいたけ、…・
痒疹 ─ 慢性蕁麻疹 でなく 慢性湿疹 でもなく。(かつ、いずれでもアリ。)
140807更新: おひとかた思い出したため、写真と病歴、
書体を追加しました。
64歳男。5~10年前、左側腹部の小結節に気付いた。しばらく経って、黒色のほくろ状になった。
初診の3~4週前に痒みと微量の出血あり受診、
関東中央病院 を紹介された。
写真: 左側腹部に紅暈を伴う、6mmの黒色扁平な小結節。 デルマフォト所見(裏面)。
★引き続き求人継続中です★ → 正解者には、何かイイコトあるかもしれません。
(ほんの冗談ですので、スルーしてください。)
161231更新
リンクの取り方を統一ルールに従って修正しました。 ついでに正解は「マダニの干物・腹側のダーモスコピー像」です。
病理も口器が綺麗に切り出され、感動ものでした。 M野先生ご紹介まことにありがとうございました。
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