済・高円寺駅前皮膚科 | 日記 | 中毒疹 ─ アレルギー“的”な皮膚のお祭り騒ぎ: 薬疹、ウイルス、しいたけ、…


2014/03/15
中毒疹 ─ アレルギー“的”な皮膚のお祭り騒ぎ: 薬疹、ウイルス、しいたけ、…


アレルギーって何ですか? → 免疫系の過剰/余剰反応“的”な…?
アレルギーという言葉の定義は、わたくし実はよく判っていないのかもしれません。
 心配になってウィキペディアで調べてみたら、
   だいたい私が認知しているようなことが書いてありました。 しかし
 I型(IgE抗体)、IV型(T細胞)以外は「自己免疫疾患」と呼ばれてるような、気が。
・本来、免疫系は外敵をやっつけるためのものです。しかし敵と味方がわかりにくいのは、
   いつどこの世でも同じこと。 誤認逮捕が起こります。でも誤認にも二つあります。
 ★誤認1=外敵の「」を間違えた。「そんなモン、敵ちゃう!」→アレルギー疾患 
 ★誤認2=外敵の「」を間違えた。「俺ミカタや、敵ちゃう!」→自己免疫疾患 
・つまり、アレルギーのほうが内輪を誤認せず、外がわかってるぶん罪が軽い、と…。
   一応、自分ではない「異物」を認知してはおります。(が異物と言うほどでも…)
・アレルギーの主役、IgE抗体にしても好酸/塩基球(白血球一家の鬼っ子)にしても、
 本来、寄生虫のような高等生物(カビやバイキンよりも)を相手にしていたせいで、
   やたらプライドが高いんだろうと思います。どこかで聞いたような話。
 過度に衛生的な世の中に、やたらにスネてキレてみせる、というわけで(衛生仮説)。
・うしろでアオるやつがいるんだなこれが。Tリンパ球(Th1とか2とか)いう連中。
 煽られたいIgE抗体on肥満細胞やら好酸球がまた、皮膚にうろうろウ×コ座りしてます。
・さて、 “抗原”さん(敵?テキ?シト?エバ?)参上。 お祭り騒ぎのはじまりです。
   むらむらしてたウ×コズ×リたちが、ここぞとばかりにキレ始めたようです。

中毒疹 ─ 全身“的”な“テキ”の認知に始まる 
・“テキ”を認知した免疫担当細胞たちは、とりあえず所属のリンパ節に行くらしいです。
・認知が局所にとどまっている(湿疹・皮膚炎)ぶんには、まだいいですが。
 食べたり飲んだり吸い込んだり、となると、局所がどこなのかよくわかりません。
   消化管やら肺たちは、やたら血液中に取りこみたがりますんで。
全身をめぐる、と。 なると、全身にお祭り騒ぎが広がってしまうことがあります。
 ウ××××リたちが全身にたむろしてれば、もう収拾つかんわけで、自力では。
   「ステロイド内服」という、鶴だかカミだかの一声で、鎮めることはできます。
   この際ステロイドに限らず、多少の神の声は必要です。(こそっと治療方針)

全身性接触皮膚炎 ─ 全身がかぶれることもある? 左右対称性 
・こうした疾患の中で、近年ちょっと話題なのが「全身性接触皮膚炎」です。
 一度そのへんの金属(ボタンや安価な装身具はアレルゲンを含みがち)にかぶれた人が、
   豆とか海草とか、ミネラル豊富な食品を大量に摂食すると、
   ニッケルやらコバルトやらたくさん含んでいるので、全身痒くなるとも申します。
・そういう目で見ると、「水銀疹」もかぶれというより中毒疹の臨床像です。
   ─ 近年では稀ですが。水銀体温計を割ったとき(吸入?)、出ます。
中毒疹の臨床像、とは何でしょうか。ひとことで言ってしまえば「左右対称性」です。
   逆に左右差がある、ということは原因が局所由来であることを示唆しています。
・中毒疹の個疹はさまざまで、反応しやすい相手のいる場所次第で変わります。
   蕁麻疹と違い寝て起きてみたら消えていた、ということもなかったり。 
 真皮で騒ぎ始めたものたちが、表皮をも巻き込み触ればブツブツでこぼこ、なにせ、
 接触皮膚炎はIV型=遅延型アレルギーの代表、表皮の炎症が主症状でございますから。

薬疹 ─ アレルギーであることないこと 
・昔から、「毒と薬は紙一重」とも申します。 それだけ、カラダにとっては、
 薬というのは毒、すなわち外敵っぽく見えてしまう。 ヒトが摂取する物質中、
   トップクラスに「誤認逮捕の的 まと」すなわちアレルゲンとなり易いものです。
・プリックテスト等が陽性になり、蕁麻疹として発症するI型アレルギーもありますが、
   多くの薬疹はパッチテストで確認できるIV型アレルギーの機序によります。
 中にはウ××たちが特定の場所だけにたむろして、くり返し決まった部位に発症する
 「固定薬疹」というのもあります。これが一目でわかる皮膚科医は、まずイケてます。
・さらにアレルギーの過程を介さずに、直接皮膚に“害”を与える薬もあるそうな。
 たとえば抗癌剤の点滴もれが起こると、薬の種類によっては皮膚が壊死します。
   乾癬の治療薬オクソラレンは、過量であれば光毒性が問題になります。
・こういった疾患は「薬剤性皮膚障害」などと言って、狭義の薬疹と区別しますが、
 アレルギーの機序が介在しているのか、判断が難しい薬もたくさんございます。ただ、
   ─ 薬のせいで皮膚になんか出た、という患者側の立場からは似たようなもので。

しいたけ疹 ─ 食べもので起こる皮膚障害 
・薬でアレルギーが起こるなら、食べ物でだって起こります ─ というほどでも?
・もちろん、ソバやピーナッツ、タマゴなどでほんまもんのジンマシン=I型アレルギー
 になるかたは、けっこうおられます。 が、IV型アレルギーは意外に少ないようです。
しいたけ皮膚炎は、秋から冬に多い日本の風土病です。 詳しくは説明しませんが、
   蕁麻疹のような赤いみみずばれが、蕁麻疹と違って何日も出つづける痒い病気です。
・生焼けのしいたけを食べたあとに起こりやすく、鍋の生煮えなら頻度が下がります。
   干椎茸の戻し汁で、大量発生した事例もあるとのことです。
・この疾患のかたに椎茸のパッチテストを行っても、ことごとく陰性になりました。
 少なくとも単なる IV型アレルギーではない、と一応結論づけられているようです。
   たぶん、熱で失活しやすい水溶性の物質が、“”として働くのだろうと。
食べものとは“異物”でありながら、受容されるべき宿命を負うものたちのことです。
 このため、真の“敵”とばかり接しがちな皮膚と異なり、消化管の粘膜上皮は
   最初は“テキ”と思ったものをも、受け容れやすい性質(免疫寛容)があります。
 消化管は「内なる外」です。 いま話題の花粉症の舌下薬の論拠でもあります。
・そもそも「あきらめないで」の石鹸は、食べるべき小麦を肌に塗りたくったのが悪い、
 と。説得力があります。 一方で、かなり怪しげな腸内細菌トレーニングなどもあり、
   これからもこの分野は、目が離せないところです。
   ★実録として、髙橋克彦「玉子魔人の日常」(中公文庫)を推薦します。

ウイルス性中毒疹 ─ アレルギー or Not ? 
・ウイルスなどの感染症が起こると、これは真の外敵であり免疫系がやっつけにかかります。
 「免疫」は、さまざまな細胞や化学物質の共同作業=相互作用、で成り立ついわば、
   シンフォニーです。非常時には多少、チューニングが狂うこともありましょう。
・皮膚でもついでに騒ぎが起こりえますが。多少の見栄えくらいは許してあげましょう。
 次に 麻疹 はしか や 風疹水痘 みずぼうそう が来たら、あなたを守ってくれます。
   さらに皮疹の性状と分布は、外敵=ウイルスの種類をも教えてくれるのです。
・とはいえ定型的な皮疹は実は少なく、皮膚科医泣かせの「非特異的」なものもあります。
 「なんかのウイルス」とか、適当なことを言われても許してやってください。
   ちなみに同じ感染症でも、細菌→真菌と高等になるほど、中毒疹は少ないようです。
・しかしこの文脈で言えば、急性蕁麻疹の一型「感染誘発性…」は中毒疹そのものであり、
   症状に基づく「蕁麻疹」と、原因に基づく「中毒疹」の病名の混乱は避け得ません。
・以上の過程は、外敵を懲らしめる正当な免疫反応の副産物であり、一概にアレルギー、
   と呼ぶのははばかられます。 考えれば考えるほど、アレルギーって何ですか? 


今回のキーワード
 ★矜持≒誇り/拗ねる/切れる/煽る/×××≒定在
 ★テキ/シト/ヒト(えどっこでい)/エヴァー(葛城ミサト=三石琴乃ヴォイスで)
= 新世紀エヴァンゲリオンは、たいへん皮膚科学的なアニメーションと感じております。

本稿と関連の深い日記もありますので、おひまな方はご参照下さい。
・ アレルギー検査について 
・ 「治らない」じんましん ─原因の“ない”かゆみ─ 
・ 湿疹・皮膚炎 ─ 理論皮膚科学の第2か3章  


★最後にかってにPR★  祝・ご開業 「渋谷駅前おおしま皮膚科」 
相模原で苦楽をともにした 大島昇 先生が、“激戦”渋谷の一等地に開院されました。
まずは無事のご開業、心よりお祝い申し上げます。
当院同様なにより「エキチカ」が売りですので、どんなお悩みでもお気軽にご相談下さい。

その実力に、折り紙はつけません。患者さま自身で感じて頂けるだろうと信じます。
充実のホームページのどこかには、こっそり院長も出演させていただいてます。
これからはいちおう競合の同業同格でもあるわけで、互いの切磋琢磨こそが肝要かとも。


140323更新: 何箇所か修正させていただきました。
★引き続き求人継続中です★ → 面接の際、修正箇所をご指摘いただければ、
 ポイントを加算させていただきます。 (ほんの冗談ですので、スルーしてください。)

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