済・高円寺駅前皮膚科 | 日記 | 乾皮症・あかぎれ・皮脂欠乏性湿疹・貨幣状湿疹 ─ 肌荒れの理論?皮膚科学(1)

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済・高円寺駅前皮膚科 の日記

乾皮症・あかぎれ・皮脂欠乏性湿疹・貨幣状湿疹 ─ 肌荒れの理論?皮膚科学(1)

2015.01.27

保湿剤 ─ 冬の国民病も、そろそろ終息の候、でしょうか。 
・東京ではそろそろ雪が降る季節となってまいりました。改めて、日本の広さはすごい。
 何がすごいのかうまく説明できませんが、やはり狭いように見えて広大なこの土地を、
   大切にしなければならないなあ、などと思います。 ……心からそう思います。
・毎度のことながら、今回も微妙に季節のずれた疾患、いまさらのご説明となり申します。
   しかも院長、不得意分野のため、これまた毎度のご叱責、ぜひお聞かせ下さいませ。

・いつもお世話になっている○ホ様の、ヒルドイドR という薬にお聞き覚えの患者さま、
 かなり多かろうと存じます。同じ“ヘパリン類似物質”が有効成分のジェネリック品も
   イケテをり、使用感がかなり違うものもあるので、いろいろ試してお使い下さい。
・肌に潤いを与える塗り薬を「保湿外用薬」と総称し、ほかに代表的なものとして、
 尿素(ケラチナミンR、ベギンR、…)やワセリン(当院では精製したプロペトRが主)、
   ほか硬い亜鉛華(単)軟膏やら、プラスチベース等の基剤やら、まで乱入したり。
・きりがないので要は、塗って潤えばツバキでも油・脂・膏でもなんでも保湿なんだ、
   と思います。たぶん。 ─ なんて、いいかげんな言い方はいけませんね矢張り。
・ステロイドをはじめとする 「強い」薬効成分 を含むのは、保湿剤とはいいません。
 (今は疲れているので、「強いとは何か」、などとはお聞きめされるなかれなもし。)
   とにかく、擦りすぎぬよう やさしく塗って、肌を労 いたわ ってあげて下さい。
・ただ院長本人、保湿外用の経験はほぼなかったりして。自前のアブラも多分アリです。

 
乾燥肌・乾皮症・魚鱗癬 ─ 水分か油分か、鱗屑か。 
湿度 が下がると、誰でも肌はカサカサします。自然な変化の表れで、ほっとけば
   良さそなもんですが。 気になれば 乾燥肌、病的になれば 乾皮症 と呼びます。
・このとき「カサカサ」と触れるのは 鱗屑 りんせつ に近いもので、剥がれ落ちかけた
 最外層の角質(また出たワンパターンですみません)です。 粉を吹いたように細かい
   粃糠様 ひこうよう のもあれば、大きめに剥がれる 葉状 ようじょう のもあり。
・例えば 尋常性魚鱗癬 ぎょりんせん は小葉状鱗屑がめだつ優性遺伝~親子の疾患で、
 程度の軽い方であれば冬にだけ、下腿に地割れのようなうろこ状鱗屑が目立つ程度です。
   意外に多い疾患なので、あまりお気になさり過ぎないで下さい。治療もできます。
  ※生まれてすぐに発症する重篤な魚鱗癬もあり、そちらは大変です。が、にしても。
     ブラック・ジャックの「蛇のたたり」は、大袈裟に過ぎないかいなという気も。

・さて、乾皮症の解説の肝心なところは自信ないので、よそを当たっておくれなもし。
 角質細胞に含まれる 天然保湿因子、というのもありますが、むしろ細胞間を埋める
   角質 細胞間脂質(セラミドとか)が最も重要、ということのようです。がんばれ。
・脂質層が水分をサンドイッチして、角層内に一定量の水分を保つように働くのです。
・セラミドは塗るとま、けっこう皮膚に入ってくれるらしいです。お試しあれ? 高そ。
   何を言いたいかというと、何でも お試しあれ、です。自分の懐と実感に任せましょ。
・基本、いくら水分だけ補っても保湿にはならず、ふやけた角層のバリア機能低下で、
 かえって有害なことも多い、ということだけ銘記しておいて下さい。 肌を守るのは、
   まずは適度なアブラです。だからいわゆる有効成分だけでなく、基剤 が大切です。
・ニベアRとかサンホワイトRとかヒルドイドソフトRもそうでしょ? ついでに言えば、
   ゲンタシンR軟膏 が抗菌外用薬いうのは誤解です。基剤がなんとなく、イイんです。


角皮症・皹=皸=あかぎれ・白癬 ─ 亀裂か皸裂か、角質層が厚すぎるのか。 
・ちなみに分厚い角質のあるところは、乾燥環境では収縮しすぎて耐えきれず、割れます。
   いわゆる 亀裂 きれつ です。私らの隠語では 皸裂 くんれつ いいます、痛いです。
・角質層を薄くするサリチル酸か、角層浅層に効きやすい尿素軟膏をよく外用します。
   こまめによくよく外用するのが良いみたい。主なターゲットは 表面、ですから。
・ただし、ここで問題になるのは尿素自体がもつ刺激性、傷に当たったときの痛みです。
 したがって、本気で割れてる(肉みえな)所は、ステロイドのテープで保護してから、
   まだ割れていない周りにせっせと尿素、ああビタミンAもありましたザーネRとか。
・その話ステしまうと、以前も申し上げたか? 隠れ水虫=白癬だけはご注意下さい。
 ミズムシは、夏に限った病気というわけではない。ヘンに踵が硬い方は一度ご検査を。
   ちなみに踵水虫の治療は内服薬で→ステ、テープ剤使ってもさほど害ありません。
あかぎれ は、特に手指に生じた皸裂を指すことが多いです。(これ多分またやります。)
 

皮脂欠乏性湿疹・貨幣状湿疹 ─ ブツブツ、ボリボリ → カサカサ、ジクジク。 
・乾皮症なにが悪いのでしょう。それは、高頻度に皮膚の 知覚過敏 を誘発するからです。
 皮表の角質が荒れてヒビワレだらけになれば、痛くならないまでも痒く、くらいなりそ。
   より理論的には、バリアが弱った表皮は外界からの刺激をブロックしきれません。
・その刺激に、カユイ感じに反応するのです。表皮内にリンパ球やら好酸球?入り込み、
   炎症性の浮腫により盛り上がって、ぶつぶつ=漿液性丘疹 が出始めます。または。
 免疫系の方でなく高次の認知の方が反応し。痒いところに 手が届き、ポリポリしたり。
・こういうブツブツ・ザラザラ・ひっかき痕を総称し、皮脂欠乏性湿疹 と申します。
 まさに国民病、というほど多い疾患ですが、最近少し減ったかしらん。 保湿の励行?
   啓蒙効果、でしょうか。知らん。 院長も昔かかったが、最近なぜか放置でOK牧場。

・好発時期は急速に湿度低下が進む冬の入りばなであって、気候が安定する真冬には、
   あまり気にならなくなってくることが多いです。 解説が毎度、季節はずしてます。
・しかし、一度生じた湿疹反応が確変すれば、貨幣状湿疹 かへいじょう という、
 けっこう立派な皮疹に至ることもよくあります。大きさや形が硬貨 コイン に似て、
   下腿伸側 中心に、ガサガサ~ジクジクした紅斑が散在~拡大融合してきます。
・ここまで至ると 自家感作性皮膚炎(個人的には 中毒疹 群の疾患と感じています)を
   併発して、全身あちこちカユクなることも多くて。 乾燥肌、決して侮れません。

・しかし、湿疹の 結果 としての鱗屑・落屑でカサカサ肌に至る、というのは大切です。
 あなたのかさかさ肌、本当に乾燥肌ですか? 乾燥してるだけですか? ─ 実は、
   病的な乾皮症には、陰に陽に表皮の 炎症 が隠れていることが多いのです。
・保湿剤なんかよりステロイド等の薬効成分の方が、よほど有効なこともあります。
   ── 次回に続く。 まずはお医者におみせ下さい。ご来院お待ちしております。


まとめ: かさかさ肌にどう対処するか。 
・ヘパリン類似物質を始めとする、奥まで入る系の保湿剤が、原理的には優れています。
・尿素やワセリンのような、表面を得意とする保湿剤の長所も、あなどってはなりません。
・外用薬はすべてそうですが、特に保湿剤には、基剤と肌の相性のよさが欠かせません。
・保湿剤は、医者が肌質を見極めたうえで処方もできます。ご自身の懐と実感を大切に。
・赤ちゃんから高齢者まで経年の変化や、気候のゆくえを常に考慮する必要があります。
・皮膚科医が水虫の薬やステロイドなど、ときに思いがけない処方をすることもあります。

お肌を労り、テキトーにスベスベ保って下さいね。 こだわりすぎは墓穴掘るかなもし。


本稿と関連の深い 日記 もあります。お時間がございましたらご参照下さい。
・ 湿疹・皮膚炎 ─ 理論皮膚科学の第2か3章 
・ 中毒疹 ─ アレルギー“的”な皮膚のお祭り騒ぎ: 薬疹、ウイルス、しいたけ、… 
・ 自家感作性皮膚炎と紅皮症 ─ 白癬 みずむし や 疥癬 ひぜん たちのスイッチオン 

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