済・高円寺駅前皮膚科 | 日記 | 爪とカンジダ ─ 爪囲炎と爪甲剥離と爪甲肥厚と
2014/10/25
爪とカンジダ ─ 爪囲炎と爪甲剥離と爪甲肥厚と
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カンジダ Candida ─ ラテン語?って感じだ。 ・最初に結論ありき。本日は、わが皮膚科真菌業界一の Trickster をご紹介します。
・白癬とカンジダは、いわば
栃錦 と
若ノ花(どっちがどっち?)に相当する二大巨頭。
業界 支えてるのでございます。最近、細菌=下等生物は
輪湖の時代 言いよりますが。
── いつのこっちゃ。ま、言うなればカク 格?
核?がちゃう、いうやつです。
・カンジダはカビ=真菌の一種ですが、皆さまのイメージを裏切り
フサフサ はしません。
こういうのを
酵母様真菌 とよび、
分芽 で増殖します。奥さん、お宅のぬか床だって、
フサフサしてませんよね?してたら不味い。ぬか漬けは乳酸菌と酵母のコラボです。
・分芽で増殖、といいつつ。 皮膚に生えるカビは、環境が良いとのびのび発育します。
仮性菌糸とか菌糸形とか呼びます。カンジダもマラセチアもフサフサしませんが。
われら皮膚科医が
検鏡 で診断つけるのに、とても役だってくれてはおります。
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爪のカンジダ症の症状 ─ 爪郭・爪床・爪甲、どこにでも。 ・カンジダ菌は湿ったところが大好きで、水仕事の多いご婦人やご職業のかたは、
手のカンジダ症に悩まされることがあります。痛くなったり痒くなったりもしますが、
何より
見ため がかっこわるくなる、のが問題なのかもしれません。
・爪にもカンジダ症が起こります。病変の主座により三つの疾患に分類できます。
★
分芽菌性爪囲爪炎 Onychia et Paronychia Blastomycetica ← 爪郭
・カンジダ菌が
爪郭 を侵すと、
爪囲炎、すなわち爪の周りが赤く腫れて痛みます。
程度が強いと「ひょうそ」のようになり、押すと膿がにじみ出てきたりもします。
・カンジダの爪囲炎は近位爪郭にも起こり、典型例では
甘皮=爪上皮 がなくなります。
爪郭のお肉は爪から浮いてすき間ができ、爪自体も凹凸 おうとつ が生じたり濁ったり。
爪上皮はきれいな爪の形成に欠かせないものであり、傷むと爪が汚くなります。
・
洗濯板 のように凸凹 でこぼこ した爪は、爪上皮の傷害によることが多いのです。
── だから甘皮を取るような「ネイルケア」は、皮膚科医的にはよろしくない。
★
カンジダ性爪甲剥離症 Candidal Onycholysis ← 爪床
・カンジダ菌が
爪床 を侵すと、爪がお肉に「くっついて」いられず、爪甲が浮きます。
いきなり全部が浮くことはなく、菌が入り込みがちな爪甲
遊離縁 側から進みます。
つまり指の先っぽから半分くらい、お肉が透けて見えなくなり白くなる、という。
・爪甲自体はほぼ正常ですが(だから白色爪 leukonychia ではありません)、
その下の皮膚は一見正常に見えつつビラーンと傷み、垢=カスがたまっていたり。
・カスに緑膿菌やらが棲みつくと、
緑色爪 green nail =緑になったり黒くなったり。
緑膿菌ごとき下等生物、剥がすほどの力ないんじゃね、と勝手に蔑 さげす んでます。
が。実は緑膿菌、強い&侮れない、もう一人の Trickster であり。またいずれ。
★
爪カンジダ症=カンジダ性爪真菌症 Candidal Onychomycosis ← 爪甲
・カンジダ菌は
爪甲 をそう簡単に侵せませんが、条件が整えばそれもまたありえます。
ありがちなのは、爪囲炎から表層に入るタイプですが、爪床から入ることもあります。
進行すると爪が分厚く、
黄色 くなりがちで、ちょっと見、爪水虫と見分けがつかん。
・爪を削って、顕微鏡で見て診断するのですが、これがまた爪みずむしと見分けがつかん。
…と言っているようでは、まだまだ修行が足りん。 ── これは、ひとりごと。
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爪のカンジダ症の診断と治療 ・爪のカンジダ症は、かなりの場合、
見逃されている と思います。視診→疑診→確診。
・診断は爪白癬と同様、臨床症状と検鏡により行い、
培養 で確定診断します。が。
ひとたび爪にはいると、検鏡で白癬菌と見分け付きにくいんですな、これが。
・カンジダの仮性菌糸と、白癬のホントの菌糸の一番の違いは、分岐と隔壁です。
しかし爪はケラチン蛋白がチョー密≒稠密なせいか、カンジダ菌も伸び方が窮屈で。
・治療は
抗真菌薬 です。爪なら塗り薬より飲み薬です? T で始まるのはやめときや。
この辺が、保険適応薬と医療経済と皆保険の根深きところ。── 下手すると、
正しく診断しない方が幸せになれたりもします? ナニが?私に
クレナフィン?
・I で始まるのも、高価なわりには効かないような。 もともと高齢者に多いので難治。
併用禁忌薬も多く、足がむくむわ。 そもそもトシとるだけで爪が伸びなかったり。
・そこはそれ、クスリ
だけ に頼るのはやめときましょう。── ワタクシ得意な分野です。
私もう開業医なのであとは企業秘密ですが。勤務医時代に発表は、しそこねてます。
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カンジダ症の症状と病型 ・カンジダは爪だけでなく、いろんな所(皮膚、口腔食道、性器、…)で悪さします。
ひとことで言えば、
行儀が悪い。── 水虫≒白癬さまの行儀の良さと比べて。
・カビというのは、宿主の迷惑にならない程度にこっそり増えるものが多いのですが。
カンジダは増殖力と起炎性が強く、宿主の免疫応答を誘導し白血球を呼び寄せます。
・皮膚では
膿疱 とびらん、粘膜では
白苔 がめだち、
痒く なったり
ヒリヒリ したり。
・カンジダの病型は、大きく三つに分類できると思ってます。(個人的には。)
★病型1=
間擦性カンジダ症 Intertriginous Candidiasis ★病型2=
開口部カンジダ症 Circumoral Candidiasis ★病型3=
内臓のカンジダ症 Visceral Candidiasis ── 爪のカンジダ症は、病型1の「
間擦性」に属しています。(個人的には。)
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間擦疹 かんさつしん とは何か ・手のカンジダ症で銘記すべきは、
女性 に多いという疫学です。 ジメジメしてる?
・
分芽菌性指間びらん症 Erosio Interdigitalis Blastomycetica も女性の病気。
主に中指と環指の
第三指間 に、びらん状の落屑性紅斑を呈し痒くなったりもします。
しかし、症状だけではまず指間間擦性湿疹と見分けが付かず、検鏡を要します。
・じめじめしがちな皮膚に生じる皮疹を
間擦疹 といいます。
随分まえ に述べたように、
ふやけた表皮はバリア機能が弱るので、何かと病的になりやすい。そもそも、見た目で
湿疹と、真菌症や疥癬の区別ってつきます? (「つきます」非ふか医。)
・指間びらん症が間擦性疾患なのはまず間違いない。無意識に軽く手を開いてください。
そして見て下さい。普通の人は、中指と薬指だけくっついているはずです。理由は、
解剖学、です。 総指伸筋腱と示指伸筋腱と小指伸筋腱とその付着ぐあい。
・爪だって、側爪郭と爪甲側縁とか、遊離縁と指尖とか、すき間に水、たまりますよね?
だから爪や周囲の皮膚に生じるカンジダ症には、間擦疹としての性格があります。
・でも多分、いかなる皮膚科教科書も、爪のカンジダを間擦疹とは書いてないと思います。
間擦部位とは、オマタとオシリとオッパイにワキ、ついでアゴ下やミミ裏、ヘソのこと。
ちゃんと言えば、鼠径/会陰部・臀裂部・乳房下・腋窩・顎下・耳後部・臍部です。
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カンジダ菌のせいで、爪は剥がれたり厚くなったりするか? (アンドロイドは電気羊の夢を見るか? ─ PKディック ごめんなさい)
・そそられちゃったら御免なさい。あくまでも真面目な話です。 カンジダ菌は、
皮膚の表層を侵し、宿主側の免疫反応の助けも借り?角質層を無力化しがちです。
・
びらん ぽくなります皮膚は。せいぜい顆粒層くらいまでと思いますが表面が剥けて。
つまりビローンとは剥けずビラーンとむけて、痛くはならず、ムズ痒くなります。
・爪床皮膚がカンジダにやられると、みため清純、じゃなく正常に見えても角層は不純、
正しい爪甲を受け容れる余地がなくなり、先っぽから離れていく一方となります。
・さらには爪上皮と並んで爪床皮膚は、清く正しい爪を作るのに不可欠な存在なので、
爪がうまいこと先に進めなくなって、古いケラチンどもが停滞してはブ厚くなります。
いき遅れている間に、悪い虫(またって感じだ)が着いて、中にまで入ったり。
・たぶん爪甲という“死んだ”角質層内にまで、カンジダ野郎の侵入を許すまでには、
けっこう長い時間と、爪甲ぜんぶジメジメしっとり
保湿 された環境を要するです。
あくまでも、当院は上品さを売りとして
真摯な診療 に取り組んでおります。
当然、この話には続きがあったりしますがあんまり気にせず、まずはご来院下さい。
つまり何を言いたかったのかというと、湿疹だって似たような感じだ、でも違う、と。
本稿と関連の深い日記もございますので、お時間があればご一読ください。・ 湿疹・皮膚炎 ─ 理論皮膚科学の第2か3章
・ 皮膚の付属器の疾患 ─ 脱毛、にきび(ざ瘡)、巻き爪(陥入爪)、などなど
・ 自家感作性皮膚炎と紅皮症 ─ 白癬 みずむし や 疥癬 ひぜん たちのスイッチオン
・ 巻き爪 ≒ 陥入爪 × 弯曲爪 ─ 爪疾患へのイントロダクション ・
爪白癬(爪水虫) ─ 爪疾患へのもう一つの入り口
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