済・高円寺駅前皮膚科 | 日記 | 爪白癬(爪水虫) ─ 爪疾患へのもう一つの入り口
2014/10/06
爪白癬(爪水虫) ─ 爪疾患へのもう一つの入り口
●
爪白癬 つめはくせん ─ 爪水虫はひと昔まえの「不治の病」 ・みずむし菌(白癬菌≒角質寄生に特化した真菌=皮膚糸状菌)がひとたび爪に入れば。
なかなかしぶといものです。三十年も遡れば、まずは
不治の病、でしたが。
・院長が医者になった頃には、すでに誰にでも治せる病気、になっておりました。
だからこそ今、当院にご来院下さい。
治る自信あります。(なんのこっちゃ。)
・爪白癬が不治の病であった理由はなんでしょうか。足白癬なら治ってたのに。
思いつくままに挙げてみます。そこから爪疾患のいろんな側面がミエてマイります。
★
自主的に病院に行かない ← 痛くも痒くも何ともない。でもたまに痛い?
★
上から塗っても効かない ← 菌の生息域が固い殻=爪甲に覆われている。
★
下から飲んでも効かない ← 宿主側の生体反応のために爪甲が肥厚する。
★
効く薬自体が作りにくい ← 真菌はけっこう高等生物なので人にも危険?
★
“非ふか医”が誤診する ← ちゃんとしてないと×××目当てに×××?
●
爪白癬の症状 ─ 爪疾患の形態学 「変な爪」 ・爪みずみし。の必須の
症状 はなんであろうか、いろいろ考えてみましたところ…、
結論は「
混濁 turbid」であると。透明 transparent な爪白癬はあまり見たことない。
どんなに分厚い
変な爪 も、黄色かろうと黒かろうと、透明な爪は
らしくない。
・前回のように、爪の異常には「爪甲自体か/皮膚や軟部組織か」の二分法があります。
白癬菌は
行儀がよい ので、おもに前者(角質の塊)を志向する傾向があります。
・爪白癬は、爪甲の
形態異常 の原因となる代表的な疾患です。 たとえば、
・形=爪甲鉤弯症 onychogryposis、厚硬爪甲 pachyonychia、弯曲爪 pincer、…
・色=爪甲白斑 leukonychia、黒色爪 melanonychia、黄色爪?、緑色爪??、…
・質=爪異栄養症 trachyonychia、爪甲軟化症 hapalonychia?、爪甲脱落症?…
・肉=爪甲下角質増殖 subungual hyperkeratosis、爪甲剥離症 onycholysis?…
── また悪い癖が出ました。適宜、スルーしてください。 ただ一つだけ、
ケラチン食って増殖する菌と、ケラチン増やして対抗する宿主と、の鬩 せめ ぎ合い。
・菌がケラチンを喰うと、その線維の規則正しい配列が乱れて、混濁を来 キタ します。
喰われるのは死んで細胞核を失ったケラチノサイトだけです。よかったですね~。
・爪疾患の形態学は、ずっと先でしょうが、また稿を改めて触れさせて頂くつもりです。
●
爪白癬の診断 ─ 検鏡と培養=菌を見る・育てる ・では爪が濁ってればヒフカイ曰く「これは爪の水虫といって治りにくい病気なんです」
── ピー!レッドカード。 爪見たとたん診断つける医者の多くは非ふか医です。
(院長たまにつけてたりして。一応私は、皮膚科医ではあるつもりなのでよろしう。)
・爪白癬の診断は、あくまでも「
爪に・菌が・生きてる」ことを確認して確定します。
その唯一絶対の手段が「
検鏡=
鏡検」(サ変名詞)です。熟練が必要です。
・厳密に言えば、
培養 して慈しみ育てて、生きてる確認までして確定するのです。が。
白癬菌は行儀がよいので、いくら育てても育たぬこともあり、逆に Aspergillus など、
爪の中にいてもいなくてもリッパに育つツワモノもあり。奧がフカイ、
深すぎる。
・そこで熟練した皮膚科医は、症状と検鏡のみで、白癬菌のイキ具合まで推し量ります。
・最近教えて頂いた、キット診断の話は興味深く。 インフルなみに、菌を検出します。
偽陽性あり非ふか医の各々方は何かとご遠慮下さい。とね! Tね
み先生よろしう。
●
爪白癬の治療・その1 ─ 抗真菌薬を内服する ・「似てる・似てないドッチ? (1) ばい菌とみずむし菌 (2) カンジダ菌とニンゲン」
クイズで失礼いたしました。答は当然、(1) 似てない (2) 似てる です生物学的には。
かほど左様に、細胞核をもつ=真核/もたない=原核は、生物の根源の違いです。
・薬を作ろ思うたとき、が特にアタマ痛いです。似てないとこを攻撃するのがクスリ。
真核生物 である真菌(ミズムシ、カンジダ、…)細胞に有毒な物質は、ニンゲンへの
副作用 もアリガチで。でも、ニンゲンなめんなよ! サイキンは結構イケてます。
・
I で始まる薬とか、
T で始まる(あえてLで始まるとしないのが見識。?)薬とか。
爪のミズムシなら、
飲み薬 がことに有効です。副作用も言われてるほどありません。
ていうか、併用薬のチェックやまめな採血など、副作用の回避を心がけます。
●
爪白癬の治療・その2 ─ 物理的療法との併用、あるいは強引なニッパーの話。 ・飲み薬が効く、とは申すものの。飲めない方、飲みたくない方が結構おられるわけで。
その場合には
塗り薬 です。ただし、そのへんの薬を漫然と塗っても治りません。
そこは不治のヤマイ歴、数十年の歴史が証明し終わってます。 ── そこで。
・まず第一に、
効く薬 を使うこと。 水虫の薬、を謳いつつ効かない薬も沢山あります。
基本はアゾール系とそれ以外を区別すること。真菌全般に有効なアゾール系には、
けっこう水虫には効きにくいものが多いので、選択と使い方に注意が必要です。
・次に第二に、効く
ように 使うこと。 爪白癬は爪甲遊離縁から爪の下の皮膚=爪床に
まず侵入する(DLSO型といいます)ことが多いので、
爪甲下角質増殖 を来します。
爪甲表面は硬くて正常なのに、先端ほど爪が厚くて濁ってぼろぼろ、という。
・こういう爪には、削って塗るのが一番です。
プラスチック・ニッパー による爪削り
の超エキスパートを自認してます院長は。(ルーター使わず済んません、ねこ先生。)
さらには飲むときだって、爪削って
菌量 を減らした方が内服薬も効きまくりです。
・特に「I
パルス療法 3回だけご来院下さい」は普通じゃ効きにくいのでお任せ下さい。
って昔から言ってるはずなのに、── 最近お見限りね? YNセンさん。
・ついでに通常分類にない「
楔型」病変は、飲んでも治らんこと多々ありお任せ下さい。
私もう開業医なので、あとは企業秘密ですが。勤務医時代に発表だけはしてます。
●
当院の取り組み ・以上を踏まえて、真摯な診療に取り組んで参りますので、ぜひご来院下さい。
●
爪白癬の治療・その3 ─ 最新の外用薬 クレナフィンR ・最後にちょっと気になる
新薬 をご紹介しておきます。実は塗り薬はつい最近まで、
爪白癬に対する
保険適応 はございませんでした。そこを突破したブレイクスルー、
E で始まる薬、白癬に強いアゾール系、9月から堂々名乗りを上げました次第です。
・なぜ効くのか、ポイントは
三つ あります。 (もっとあります?K研さん?)
(1) アゾール系の中でもトップクラスに、白癬菌への
抗菌力 MIC とか、がよい。
(2) 普通の液剤(1%とか)に比べて、10倍以上の
有効成分 をぶち込んでいる。
(3) 角質≒ケラチンの塊、に対する
親和性 は、IとかTとかに比べてむしろ低い。
・特に説明が必要なのが(3)です。ケラチンにトラップされないことを逆手にとって。
オモテから塗っても表面にだけ留まらず、
爪床 の方にまで届きまっせ、いうこと。
逆に洗えば落ちるんちゃう?というほどには落ちませんのでご安心を。
・もひとつ(2)に関して言えば、接触皮膚炎 かぶれ の多発は懸念されます。そこはそれ。
せっかくの新薬ですから、温 ぬく い目で見守って参りましょう。──「3回だけ」も
パルス始めたとたんに薬疹(=すぐ治ります)が増えた?…、私の錯覚でせうか。
ちなみに濃いから
高い ですお値段は。 飲み薬なみ、の効果を期待イタしませう。
・これだけ宣伝してあげたんだから、K研さん、なにかワタシにくれなふぃん?
── 毎度のことながら、腐ったようなギャグで〆 シメ させていただきます。
いつにもまして、カタカナ言葉および企業名の隠語が多く、ウザくてスミマセン。
誤解なきよう申しておきますと、TもIもEも?私的には素晴らしい薬です思てます。
そいえばGで始まる薬が抜けちょりました、また売ってちょ誰か。詳細は扁平苔癬で。
おあとがよろしいようで。
本稿と関連の深い日記もございますので、ぜひご一読のほどお願い申し上げます。・ 皮膚の付属器の疾患 ─ 脱毛、にきび(ざ瘡)、巻き爪(陥入爪)、などなど
・ たこ(胼胝)/魚の目(鶏眼) ─ 実はイボ?ついでに巻き爪も=治療できる足の痛み・
自家感作性皮膚炎と紅皮症 ─ 白癬 みずむし や 疥癬 ひぜん たちのスイッチオン・
巻き爪 ≒ 陥入爪 × 弯曲爪 ─ 爪疾患へのイントロダクション
>
日記の一覧に戻る
[0]
店舗TOP
ペ-ジの一番上へ戻る