済・高円寺駅前皮膚科 | 日記 | 皮膚の付属器の疾患 ─ 脱毛、にきび(ざ瘡)、巻き爪(陥入爪)、などなど
2014/02/25
皮膚の付属器の疾患 ─ 脱毛、にきび(ざ瘡)、巻き爪(陥入爪)、などなど
冬なのにちょっとアツくなりすぎたきらいもあって、話題を変えてみます。
●閑話休題 それはさておき ─ 「爪 つめ って骨の一部なんですか?」 ・突然ですが、爪って「骨っぽい」と思われませんか?
・爪の疾患のかたから、よく「カルシウムが足りないのでしょうか?」と聞かれます。
── カルシウム Ca はヒトにとっての必須元素ではありますが、
摂り過ぎはカラダによくないこともあり得るので、ほどほどにしましょう。
(高 Ca 血症というのがあります。いちおう当方、アンチ・サプリメント派です。)
・Ca は爪とはあまり関係ありません。爪の主成分は表皮と同様
ケラチン(蛋白質)です。
だから、骨ではなくて皮膚の一部でございますから、皮膚科にいらして下さい。
(当院も相変わらず、そこそこヒマにしておりますので。)
●「爪」と「毛」という名の角質 ・爪のように、皮膚の一部なのかどうなのかよくわからないものを、「
付属器」といいます。
多少、皮膚サイドの“上から目線”のネーミングですが、定義ですので許して下さい。
角化細胞
ケラチノサイト と類似の細胞が一員をなすユニット、とでも申しましょうか。
・皮膚の角質層と似たような「ケラチン」、からできている
爪と
毛がその代表です。
いわば専従の特殊な表皮=
爪母・毛母が、爪と毛という特殊な角質をつくっています。
・爪や毛自体は、すでに死んで細胞核を失った「タンパクの塊」に過ぎませんが、
それをつくり出す爪母や毛母は、盛んに細胞分裂を繰り返す生き生きとした細胞たちです。
多少のことなら爪が傷んでも毛が抜けても、再生力は旺盛、なはずなのです。
●皮膚の付属器=爪・毛包・脂腺・汗腺 ─ 「ニキビ」は毛包脂腺系の疾患です ・爪と毛にしか触れないと、他の付属器から文句が出そうです。たとえば
汗腺です。
真皮下層~脂肪上層の分泌細胞が、せっせとつくった「あせ」を皮膚に与えてくれます。
体温とフェロモン?の維持に活躍しており、皮膚としては頭が上がりません。
なのに上から目線なのは、出口付近の汗孔やら汗管は、ケラチノサイトに似てるからです。
さらに「汗を供給する」という単一機能性が、付属品ぽく見せてしまうのでしょう。
・また
脂腺(皮脂腺)様もおられます。分泌細胞は“自爆(ホロクラインといいます)”
してまで、皮膚にバリアと潤いを与えてくださる、ありがたい存在です。
・これまた「皮脂の供給」という単一機能に特化した腺組織ですが、実は特殊な例を除いて、
皮脂腺は「付属器である毛」にさらに従属した、下僕の立場を強いられます。
・毛は皮下脂肪組織にある 毛母 もうぼ に発し、毛包 もうほう に包まれて皮表に出ます。
皮脂腺はこの
毛包(ケラチノサイトのさや)の中、毛の出口よりも下に開口しています。
このため、皮膚のアブラはケアナ(
毛孔 もうこう)から出てくるのです。
── ちなみにガマのアブラは脂ではなく 蟾酥 せんそ という毒だそうです。
・毛孔より下となると、毛穴がつまれば毛包内に、垢と一緒に脂がたまってしまいます。
これを
面皰 めんぽう といい、ニキビのたねです。垢や脂は
異物反応のもとなので、
面皰が破れれば一気に赤く腫れて、立派なニキビができることになります。
・以上、毛と毛包・皮脂腺を併せて、「
毛包脂腺系」と呼びます。
ニキビ=ざ瘡 は毛包脂腺系疾患の代表であり、その生理を踏まえた治療が必要です。
・ちなみに傷を負ったときには、顔と手足の創部はふつう、治りやすい傾向があります。
付属器は真皮深層以下にも位置するので、表皮が欠損しても生き残りやすいのです。
顔には毛包脂腺、手足は汗腺が豊富にあり、再生ケラチノサイトの供給源になります。
●付属器疾患=自費診療の宝庫 ── 悪く言えば、魑魅魍魎の跋扈 ・付属器周辺のみが問題を起こした疾患は、局所の治療にさまざまな工夫の余地があります。
また、皮膚全体に通用する外用薬などに比べ、治療法の確立が遅れがちになります。
いまや陥入爪手術の代表「
フェノール法」が、保険診療で正式に認められたのは、
せいぜい10年くらい前ではなかったでしょうか。
・いきおい、新しい工夫が生み出されては、全額自己負担での診療が行われていきます。
本当にすぐれた治療法はおおいに普及していってもらいたいものですが、
受診する側の立場から見ると、正直、なんだかよくわかりません。
診療する側の立場から言えば、信念に基づいて、誠意をもってあたるしかありません。
・当院の基本理念、および自費診療のメニューは、今のところ変更ありません。
興味のあるかたは昔の日記を遡ってご参照いただけるよう、お願いいたします。
いちおう、治療してみての手応えと、マイオリジナリティーにはこだわっています。
・少なくとも 魑魅魍魎 ちみもうりょう とは呼ばれぬよう、襟を正してまいります。
個々の付属器疾患については、ときどき追加していく予定です。
◆
脱毛とは人生の大半を付き合ってきておりますし。
◆
巻き爪(陥入爪)をはじめとする、爪疾患の診断と治療は大好きなテーマです。
◆
にきびも「毛穴のつまりを取る新薬」=ニッ・キッ・ビッ は皮・膚・科・へ♪ by かなちゃん
が出て以来、格段に治療しやすくなりました。
が、いまだに個々の事例へのカスタマイズは難しく、興味の尽きない疾患です。
ご来院、お待ちしております。
140303追加: ニキビについては、
相模原にいた2年前の記事があるのを思い出したので、どうぞご参照下さい。
国立病院機構 相模原病院 「
耳よりいいメール 56号」
140530更新: 本稿と関連の深い
日記 を追加しております。どうぞご参照下さい。
・
たこ 胼胝/うおのめ 鶏眼 ─ 実はイボ?ついでに巻き爪も=治療できる足の痛み・
脂漏性皮膚炎(フケ症)、酒さ(赤ら顔)、ざ瘡(ニキビ)、… ─ セボレア 脂性 の理論皮膚科学・
しゅさ(赤ら顔)、ざ瘡(ニキビ)、脂漏性皮膚炎(フケ症)、… ─ セボレア 脂性 の理論皮膚科学・続
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ざそう(ニキビ)、脂漏性湿疹(ふけ症)、酒さ(赤ら顔)、… ─ セボレア 脂性 の理論皮膚科学・新
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ざ瘡(にきび)─ セボレア 脂性 の理論皮膚科学・完 :そして、慢性膿皮症と粉瘤(ふんりゅう)
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