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済・高円寺駅前皮膚科 の日記

おとなのシモヤケ=それって末梢動脈疾患 PAD/ASO? ……メタボから血管炎・膠原病まで

2014.03.06

●「トシとってから、冬になるとシモヤケがひどくなって困ってるんです」
・というひとが来ると(実際は、ご本人より娘さんあたりがそう言ってきたりして…)
   ── 皮膚科医は、身構えてしまいます。
・もちろん、オトナにも普通のしもやけは起こりますし、過剰な心配は無用です。
 ただ、「ほんとのシモヤケ」は一部血管の攣縮 れんしゅく によるため、多少なりとも
   「境界明瞭」です。怖いシモヤケを特徴づけるのは「年々悪化」です。おおむね。
 凍瘡 とうそう ではないシモヤケもどきの病気や病態は、実はたくさんあります。
・最初に言ってしまいますと、可愛いしもやけは赤いです。怖い霜焼けは、紫で蒼いです。
   そして、よくわからないシモヤケは、赤黒いというか、赤紫色です。
・要するに、ヘモグロビンの色、なのでしょう。生理学の基礎のキソなんだと思いますが、
 きちんと酸素化されたヘモグロビンは赤くて、そでなければ青いとまあ、そゆことで。
   酸素化不十分なヘモグロビンが毛細血管レベルでめだつのは……チアノーゼ
・それって皮膚だけなん? ほかの臓器の細胞たちかて、酸素や栄養くれはるんは、
 毛細血管ちゃいますのん? 脳みそや心臓のチアノーゼ、みとない見たない。
   ……見えへんて! (インチキ関西弁で失礼いたしました。)
・内臓のチアノーゼは、見たくても見られません。皮膚のチアノーゼはよく見えます。
 特に人体の末端にある手足はもともと血のめぐりが悪いので、早くから異状が判ります。
   肺や心臓や血管、の中でも動脈、のピンチを、いち早く知らせてくれるのです。

●壊疽 えそ ─ 目に見える梗塞
・脳梗塞や心筋梗塞は、いのちに直結する器官のいわば「死の病 やまい」ですから、
 一大事です。しかし、臓器にはあまねく「梗塞 こうそく」があり得るのであって、
   皮膚など末梢の梗塞は「壊疽 えそ」という名で呼ばれています。
・皮膚に十分な酸素や栄養が与えられない状態が、比較的急速にすすむと壊疽になります。
 末梢で酸素化血の途絶=阻血 が起これば、皮膚のみならず肉も骨も壊疽になります。
   代表的な原因は、感染症(ガス壊疽)、動脈硬化(後述)、動脈塞栓などです。
   肺疾患や心不全による低酸素血症自体は、あまり壊疽の直接の原因にはなりません。
・一般には、酸素化血を運ぶ動脈という“くだ”自体が途絶して、壊疽が起こります。
 感染症を起こす悪いばい菌は多少なりとも血管を傷害しますが、ガスえそ菌
 (手足が腐ってくさ~くなって、死んじまうぞ by 手塚治虫)や溶連菌(溶血性連鎖球菌)
   は健康なヒトにもとりつき、細動脈までをも詰まらせることがあります。
・しかし、頻度で言えば≒よほど運が悪くなければ、むしろ生活習慣、らしいです。

●動脈硬化 ─ 時代は 閉塞性動脈硬化症 ASO から 末梢動脈疾患 PAD へ

・阻血の最大の要因は、動脈硬化症です。本来弾力に富むはずの動脈の壁に“カス”が沈着し、
 “くだ”が固くなったり、内腔に盛り上がって狭窄したり、血液の凝固を助長して
   血栓を成長させたり、それがまたちぎれてとんで末梢側の塞栓を起こしたり。
・そして、高血圧や喫煙と並んでこの動脈硬化を助長する悪玉の代表格が、
 「糖尿病」であり「メタボリック・シンドローム」(微妙に異なります)です。
   わたくしの説明では間違っていそうなので、詳しくは専門家にお問い合わせ下さい。
・わりと最近まで壊疽のもととなる下肢の動脈硬化症は ASO と呼んでいましたが、
 もう一つの慢性動脈閉塞症である TAO(バージャー病)が激減するにつれ、最近では
   欧米の呼び方にならって「末梢動脈疾患 PAD」の呼称が好まれるようになっています。
 正直、インパクトの弱すぎる病名だと感じでしまうのですが。
・名前はどうでもいいです。とにかく下肢は重力のハンデもあって、アブナイです。

●血管炎 ─ 炎症による阻血 / 紫斑病と動脈炎

・動脈硬化の過程とは別に、唐突な形で血管を標的とした炎症が起こることがあり、
 「血管炎」と総称されています。 血管炎が起こると血液の成分が漏れたり、
   血栓(血の塊)ができやすくなって“くだ”自体がつまったりします。
・標的となる血管のレベルによって病態が違ってくるため、多くの疾患があります。
 一番多いのは「紫斑病」と呼ばれる、赤紫のブツブツが下腿を中心に多発する病気です。
   毛細血管を標的とする血管炎であり、「赤紫」は漏れ出た赤血球の色です。
・動脈を標的とする「動脈炎」もいろいろあります。紫斑病ほど皮表に近くないので
 漏れ出た血の色がめだちにくい一方で、阻血の症状はより深刻になりがちです。
   傷害される動脈の太さによって、高安動脈炎、側頭動脈炎、結節性多発動脈炎 PN、
   顕微鏡的PN、ウェゲナー肉芽腫症、チャーグ・シュトラウス症候群、…など。

●膠原病 ─ 攣縮による阻血 / レイノー現象

・そしてもう一つ、動脈系の閉塞をきたしうる疾患群として忘れてはならないのが、
 膠原病 です。これまたひろく深く、とても短文にまとめられるものではありません。
   が、その初期症状として現われる レイノー症状 だけは見逃してはなりません。
・ひとことで言えば、「白いしもやけ」とでも申しましょうか。
 寒冷環境において突然、指の末端が蝋のように白くなり、しばらくそのまま治りません。
   暖かくすると、チアノーゼの紫から、酸素化血の赤を経て元に戻ります。
・普通のしもやけと同様、攣縮による阻血であって可逆性のものですが、
 膠原病はひとたび発症すれば、しばらくは進行し続けることが多く、
   血管に限らない全身への悪影響も多い疾患群のため、決して放置しないでください。
・また、皮膚科医でも凍瘡と間違える「凍瘡様狼瘡(ループス)」=エリテマトーデス?
   サルコイドーシス?の皮疹などもあります。赤紫のしもやけ、なめんなよ?

●早期発見・早期治療。月並みですが。

・血管炎にしても膠原病にしても、「自己免疫疾患」としての性格が強く、
 まだまだ謎の部分が多い病気のオンパレードです。そういう診断を受けた方は、
   ゆく末の長きをみて、気がふさぐことも多かろうとお察しします。
・一方で糖尿病やメタボと言われたかたは、「自己管理ができてない」などの
   謂われなき偏見や中傷に、アタマにキテおられるかもしれません。
・しかし、これらの疾患は現在、もっとも優秀な研究者やキレる医師たちが、
 熱い関心をもち続ける分野のひとつであること、これはもう間違いございません。
   その医療レベルの進歩に期待し、刮目して待ちましょう。(ヒトゴト目線?)
・忘れてならないことは、動脈硬化の進行は予防できるかもしれず、
 血管の炎症や攣縮は、治療に反応しうる可逆的な変化のはずだ、ということです。
・早期の発見/治療は、がん診療の専売特許、ではないのです。


動脈系の循環不全を駆け足でまとめよう、と思ったら、
   ほとんど「シコ踏んでる」ようなスタンスになってしまいました。
やはり一筋縄ではまいりません。 近日中に静脈系以後にも取り組んで行きます。

今回の内容は、2月の「しもやけ」とも密接に関連しますので、
お時間があればどうぞご参照下さい。
 

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